今でこそ「新型コロナウイルス」という言葉に慣れてしまいましたが、パンデミック(感染症の世界的大流行)といえば、過去最大規模とも言われるのが1918年の「スペイン風邪」です。
でも実は、この「スペイン風邪」、スペインが原因で広まったわけではないってご存じですか?
本当の発生源はアメリカだった!?
1918年、世界は第1次世界大戦の真っただ中。インフルエンザは、アメリカのカンザス州・陸軍基地キャンプ・ファンストンで最初に大規模に確認されたとされています。そこからヨーロッパ戦線に向かうアメリカ兵によって感染が拡大。塹壕や兵舎など、感染しやすい環境が整っていたため、あっという間に広がりました。
ところが当時、交戦中の国々はインフルエンザ流行の情報を伏せていたため、公にはなりませんでした。理由はシンプル、「兵士の士気を下げたくなかったから」です。
なぜ「スペイン風邪」と呼ばれるようになったのか?
そんな中、中立国だったスペインは情報統制をしておらず、インフルエンザの流行をいち早く報道しました。これにより、世界中の人々が「スペインで大流行しているらしい」と誤解。こうして、「スペイン風邪」という不名誉なネーミングが定着してしまったのです。
スペインにとっては完全なぬれぎぬ。今でいう「風評被害」ですね。
そもそもインフルエンザ菌って?
ちなみに、当時の医学ではウイルスという存在がまだよくわかっていなかったため、「インフルエンザ菌(Hib)」が原因だと勘違いされていました。後に、ウイルスが原因であることが解明されるなど、科学は大きく進歩しています。
パンデミックは過去の話ではない
100年以上前の出来事とはいえ、「スペイン風邪」は今の私たちに多くの教訓を残しています。当時はワクチンも抗ウイルス薬もなく、世界人口の3分の1以上が感染、2,000万〜5,000万人が死亡したと推定されています。
新型コロナウイルスの流行も記憶に新しいですが、インフルエンザウイルスも変異によって新たなパンデミックを引き起こすリスクが常にあるのです。